残業する必要性

前章では残業が発生する理由について説明した。特に前章の後半で説明した人材不足による残業は過酷な労働環境だ。最初は少しの残業かもしれないが、人が辞めていくにつれて徐々に残業時間が伸びていく。その結果、気がついたら長時間残業になっているのだ。

先程の説明の中で、システム導入の例を説明した。システムを導入すれば従業員の残業は減るが、会社にとって合理的な選択肢ではないため、システムを導入せず、従業員に残業をさせるという内容だった。

また会社が合理的な選択肢を取るならば、忙しい時期の仕事量に合わせた人員ではなくて、忙しくない時期の仕事量に合わせた人数を雇う。そして忙しい時期にはその人たちに残業させることによって仕事を消化し、人件費という固定費は出来るだけ抱えないようにするだろう。

これら2つの内容に共通する点として、残業が発生するのは、会社側の都合に起因するということだ。例えば仕事量が時期によって変動したり、急成長しているため仕事量が急激に増加することが考えられる。

これら仕事量の変化は、言ってしまえば会社の都合に従業員が合わせているだけなのだ。もちろん、従業員は雇用契約に基づいて、会社に雇われている立場であることから、会社の都合に合わせるのは考えれば当たり前だ。

もし仮に従業員の労働環境を第一に考えたらどうなるだろう。従業員の労働環境を第一に考えた場合、会社は仕事量を増やすことは出来ない。仕事量を増やすとしても、新しく人材を雇う見込みがあり、その増えた仕事を新しい人材に担当させることが決まっていない限り、会社は新たな仕事を取ることは出来ない。

また忙しい時期に合った人数を配置して、定時までに仕事を終わらせるようになるため、忙しくない時期は定時より前に仕事が終わり、逆に暇な時間が出来る。

このように考えると、従業員の労働環境を第一に考えた職場を作ることが出来るのなら、ホワイトで働きやすい環境になるだろう。

一方で、実際に会社がこのような職場を作るかと言われると、決してそのようなことはない。

会社は営利企業であり、いかに利益を稼ぐか否かによって物事を判断する。したがって、この選択肢は儲かるか否か、この方法は合理的かどうかを常に考えて物事を決めていく。

先程の従業員の労働環境を第一に考えた職場にすることで、従業員のモチベーションは上がるかもしれない。一方で新たな仕事を取ってこれなかったり、多くの従業員を雇うことによるコストが発生する。

したがって、従業員のモチベーションが上がったことによる収益の増加と、その労働環境を作るためにかかる費用を天秤にかけて、利益がより多く発生する方を会社は選択するだろう。

実際に労働環境を第一優先にすることで、従業員のモチベーションが高まり、利益がより多く発生する会社も存在する。しかし、従業員のモチベーションというのは、一定の基準で測ることが困難であり、その効果を測定することは出来ない。

一方で、従業員を最低限雇い、コストを最小限に抑えることは、コストという測定可能な数値に基づくため、客観的で判断しやすい。

したがって、客観的に測定できるコスト削減を選ぶ会社がほとんどなんのである。

話を戻すと、つまり残業が発生するのは、会社の都合に起因することが多いということだ。時期によって仕事量が変化したり、急成長するために仕事量が増えることは完全に会社の都合だろう。

会社の都合に合わせて従業員がたくさん残業したら、従業員にとって何かメリットはあるのだろうか。

もちろん、会社の規模が大きくなり、会社が成長すれば、従業員のボーナスが増えるかもしれない。しかし、個々の残業がボーナスの増加に繋がっているかと言われると、直接的な関係を示すことは難しい。また会社によって異なるかもしれないが、会社の成長に伴って増加する賞与はそこまで多くないのではないだろうか。

さらに大きくなった会社の役員になることも可能性もあるが、役員に慣れるのは人数が限られている。したがって従業員の観点からすると、仕事量が増加して残業が発生することに大きなメリットは無い。

 

それでは、従業員の立場から考えた時に、残業は本当に必要なのか。残業をすることによって、従業員にとってどんなメリットがあって、どんなデメリットがあるのか。

もちろん、会社にとっては、たくさん仕事をしてもらうことで、利益を獲得することが出来て、結果として会社の規模が拡大する。会社にとっては従業員を雇ってたくさん働いてもらい、残業をしてもらいことにメリットがある。

一方で従業員はどうなのか。総合的に判断して従業員は残業をするべきなのか。従業員の立場からみた時に、残業は必要性なのか、本章で考えてみよう。

次章⇒残業の必要性-①

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