残業が発生する理由-⑤

仕事量が増加する要因

仕事量が増加する大きな要因として考えられるのは、会社の状況や時期によって忙しさが大きく変動することが挙げられる。

例を挙げてみよう。会社の中に経理部という部署があることをご存知だろうか。会社は営利企業であるため、設立から半永久的に利益を稼ぐことを前提に設立されている。一方で、会社の株を買ってくれている株主やその他利害関係者に会社の業績を説明する責任がある。

しかし、会社は半永久的に活動することを前提としているため、一定の期限を区切って業績を計算する必要がある。現状の法律では、1年おきに業績を発表することが求められているため、日本のほとんどの会社は業績を計算する期間の区切りを3月末に設定している。

経理部というのは、会社の業績がいくらか、3月末の資産状況はいくらなのか計算することが主な仕事となる。そのため、業績や資産状況を計算する3月末の前後の期間、つまり3月中旬~4月末が一年で一番忙しい時期になる。

例えば、先ほどの例を用いると、10人の社員が経理部に所属している。忙しくない時期には毎週350~400時間分の仕事が発生する。一方で、3月前後のように忙しい時期には500~600時間の仕事が発生するとする。

忙しくない時期には、先ほどの計算のように一人当たり40時間/週働けば、残業をしなくても定時で仕事を終わらせることが出来る。しかし、忙しい時期はどうだろう。仮に発生する仕事が600時間/週だとすると600時間/週÷10人=60時間/週となる。

定時まで働くと一人当たり40時間/週となるため、60時間-40時間=20時間/週残業しなくてはならなくなる。一年を通して、仕事の量が一定であれば、残業せずに定時で終わらせることが出来る一方、繁忙期や閑散期など、時期や会社の状況によって、仕事の量が変化した場合、定時に仕事が終わらず、残業が発生してしまうのだ。

ここで1つ疑問が発生する。

今の人員は、忙しくない時期の仕事量400時間/週を基に、400時間/週÷一人当たりの労働時間40/週=10人と計算している。もし仮に、忙しい時期の仕事量を基に人数を計算したらどうか。

忙しい時期の仕事量を基に人数を計算すると、忙しい時期に発生する仕事量600時間/週÷一人当たりの労働時間40/週=15人となる。したがって、忙しい時期の仕事量を基準にして人員を配置すると15人ということになる。

それでは、会社にお願いしたら、この部署は15人に増えるのだろうか。答えはNoだ。

まず、人を雇うということは、その分人件費を抱えることになる。人件費は固定費と呼ばれ、一定額発生する費用であり、削減が難しい。実際、一度会社に入ったら、規則を破ったり会社に損害を与えない限り、会社から解雇されるようなことはない。

従業員は会社に対して弱い立場にあることから、会社が人を解雇するのにはそれなりの理由が必要になってくる。例えば、今退職してくれたら通常の退職金に上乗せすることを条件に退職してくれる人を募集する。また、会社の業績が著しく悪化しており、もうこれ以上人を雇い続けられないということが説明出来ない限り、会社の裁量で人を解雇することは出来ない。

このように、会社にとって多くの人を雇うことは、それなりのリスクを抱えていることになる。

また、この例の状況下でもし15人雇ったらどうなるだろうか。忙しい3月前後の仕事量に合わせて人を雇うことになるため、3月前後はみんな定時まで仕事をして、ちょうど終わる量の仕事がある。

しかしそれ以外の時期はどうか。忙しくない時期は、通常10人で仕事を終わられられるところ、15人雇っている。したがって、みんな働いていると仕事が早めに終わってしまい、逆に仕事が無くなってしまう。

会社にはいるけど、仕事が無くて、指示を待っている時間を手待時間という。この時間は仕事をしていないものの、会社の都合により待機している状態なので、会社は通常通り給料を支払わなくてはならない。

このように忙しい時期を基準に人を雇うと、忙しい時期は良いが、忙しくない時期には仕事が無くて、逆に人が余ってしまう。また人が余ったところで急に解雇することも出来ず、その間も一定額の人件費が発生してしまう。会社にとっては雇っている人を待機させてお金を払っている状態なのだ。

したがって、会社は15人を雇うことはせず10人雇うことになる。そして忙しくない時期には通常通り定時まで働かせて、忙しい時期には残業をさせることによって仕事を消化していくのである。

 

 

残業をさせると、通常の時給に加えて25%上乗せした分を支払わなければならない。しかし、15人分の人件費を抱えるよりは10人に残業代を払う方が総合的に見ると、人件費が安くなるだろう。

 

このように作業時間が大きく変動すると、時期によって必要な人員が変動する。会社は人員が10人から15人に変動する場合、変動幅の最も高い15人を選ぶと毎月多くの人件費がかかってしまい、忙しくない時に損をしてしまう。

したがって、変動幅の最も低い10人を雇い、忙しい時期には残業で対応させることで、仕事を終わらせようとする。

このように、時期や会社の状況が変化することにより仕事の量が増減すると、従業員は定時内では仕事が終わらず、残業しなければ仕事が終わらなくなる。時期の仕事量や会社の状況の変化によって、残業が発生してしまうのだ。

 

 

先ほどは、仕事量と人員のバランスが崩れた時に残業が発生することを示し、仕事量が増加する要因について、説明した。仕事量が一時的に増加する場合には、新たに人員を雇うことはせず、今雇っている人を残業させて仕事を消化させようとする。その結果、一人当たりの仕事量が増えて、定時内には終わらず、残業が発生してしまうことになる。

次節⇒残業が発生する理由-⑥ 

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