残業が発生する理由-③

次に残業が発生する理由として、会社の事情で仕事が効率的に行えないことが挙げられる。例を挙げてみよう。

例えば、会社があるお客さんに商品を販売することになった。あなたは商品をそのお客さんに出荷して貰うように社内で出荷指示書と呼ばれる書類を作成する仕事を担当している。

この出荷指示書が上司に承認され、倉庫にいる出荷担当者の元に届くと、その出荷指示書の情報に基づいて、必要な量を出荷することになる。

ただし、あなたの会社は習慣としてこの出荷指示書を全て手書きで書かなければならない。販売先や商品名、必要な数など沢山の情報を記載しなければならないとする。

この出荷指示書を作成するのに1時間かかったと仮定した場合、1日に8件注文が来たら、それだけで8時間かかり、1日が終わってしまう。

ここで、この業務にシステムが導入されていたらどうだろう。取引する顧客は最初の段階で名前や住所が登録されている。取引先や商品名を検索すればすぐに出てくる。必要な数のみ記載して、あとはその書類をシステムから出力するだけで、簡単に書類が作成される。

この作業の場合、1枚作成するのに10分あれば完了するだろう。またその書類を提出するとシステム上で上司に通知が行くようになっており、上司が承認をしたら自動的に出荷担当者に送られるようにする。このように自動化することによって、業務が効率化されて、仕事が減ることになる。

このように、この例の中では、システムを導入するだけで、8時間かかっていた仕事が2時間未満で終わらせることが出来るようになる。仕事が早く終わるのであれば、従業員の立場としては、このシステムをいち早く導入して欲しいと思うだろう。

しかし現実はそうはいかない。会社の立場から考えると、システムを導入しない方が、会社にとってメリットな場合もある。

もう一つの前提として、あなたが担当しているお客さんは特殊な業種であり、出荷指図書が他の形式と異なっているとする。そのため、システムを導入したとしても、あなたが担当しているお客さんにしか適用できない。また、システムの導入費が1億円かかり、5年間しか使えない。

一方、人を雇ってマニュアルで出荷指図書を作成させた場合、人件費は年間500万円しかかからないとする。

この場合、会社はシステムを導入するだろうか。答えは否だ。システムのコストを単純に年平均すると、システム導入費1億÷使用年数5年=2,000万円になる。一方で、人を雇った場合の人件費は500万円。業務の質に大きな差がなければ、会社はシステムを導入せず、人を雇うことを選択するだろう。

もし仮にシステムを導入せず、1日に平均10件注文が来るとなると、1つ作成するのに一時間かかるため、一日10時間働くことになる。法律で決まっている8時間より2時間多いが、新たに人を雇うほどではないため、もともと出荷指示書を作成する担当者にやってもらうことになるだろう。

つまり、この業務を担当する人は、システムを導入しない限り、仕事の性質上、1日2時間残業することになるのだ。

会社のほとんどは営利企業である。利益は物を売った時に得られる売上から、物の原価や物を売るためにかかった費用を差し引いて計算される。そのため利益=売上-費用と計算される。利益を上げるための方法は、主に2つ。売上を上げるか、費用を下げるしかないのだ。

先ほど説明したのは、費用を削減するための方法だ。物を売るために年間500万かかる選択肢を選ぶか、もしくは年間2,000万かかる選択肢を選ぶか。あなたが会社の経営者だったらどちらを選ぶだろうか。私は、間違いなく年間500万しかかからない選択肢を選ぶだろう。

つまり、仕事のやり方は、会社の事情によって大きく変わってくる。私たち従業員から見ると、仕事は出来るだけ少なく、かつ効率的に行ったほうがいい。無駄な作業を出来るだけ省き、必要な仕事だけ行えば、定時に帰ることが出来るだろう。

しかし、仕事の方法が効率的になる方法を会社が必ず選ぶとは限らない。会社はその方法が会社にとって合理的か否かの判断軸で物事を決める。先ほどの例を基にすると、システムを導入すれば、仕事が効率的になり、私たち従業員にとってはメリットがある。

一方で、システムを導入するとコストが年間1,500万円余分にかかってしまうため、その選択肢は会社にとって合理的ではない。合理的ではない選択肢は会社にとってデメリットであることから、その選択肢を会社が選ぶことはない。

その結果、従業員は今まで通り、非効率な仕事を行わなければならないのだ。そして会社の決定により、システムが導入されないため定時までに仕事が終わらず、残業しなければならなくなる。

 

 

会社の中で働いている以上、労働契約に基づいて、会社の指示のもと働かなければならない。従業員である以上自分たちの利益を無視してでも、会社の利益を優先しなければならないのだ。

つまり、仕事を効率的に行って、定時までに仕事を終わらす方法はあるが、会社の決定によって、残業が発生していることがある。会社の決定に従うことによって、私たち従業員にとって不利な影響を及ぼし、その結果残業が発生してしまうことがあるのだ。

 

次章⇒残業が発生する理由-④

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする